【短編小説全10話】第4話:窓辺の指定席
2026年2月9日
1. 昼前、カーテンを開けた。強い光じゃない。薄くて、冬の名残を引きずった光。 窓ガラス越しに、外の空気が少しだけ動いているのが分かる。雲が流れ、電線が揺れ、遠くで車の音がする。 世界は、ちゃんと続いている。 2. 窓辺 […]
【短編小説全10話】第3話:触れたあとに残るもの
2026年1月26日
朝、目が覚めたとき、最初に思ったのは「軽い」という感覚だった。身体が軽いわけじゃない。布団の中が、軽い。 ハルがいた頃は、夜のあいだに何度も体勢を変えた。重みが移動するたびに、こちらも少しだけ身じろぎをする。眠りは細切れ […]
【短編小説全10話】第2話:空になった皿
2026年1月11日
1. 朝が終わったあとも、部屋は静かだった。朝が終わると何かが変わると思っていたけれど、そんなことはなかった。 私は台所に立ち、流し台の前でしばらく動けずにいた。蛇口をひねれば水は出る。ガスをつければ火もつく。生活は、こ […]
【短編小説全10話】第1話:鳴かない朝
2026年1月4日
1. 目覚ましが鳴るより早く目が覚めた。理由は分かっている、理由がもうないことも分かっている。 いつもなら、胸の上か腹のあたりか、あるいは枕の横どこかに小さな重みがあった。毛の温度、呼吸のリズム、喉の奥で小さく回るエンジ […]




